怠け者田舎暮らし派の私の家に遊びに来てすら、そうつぶやく人がいるから驚かされる。何しろ私は吉川さんと違って、梅の木一本を維持することも満足にできないでいる。そんな私でも行きずりの都会人の目には、「よくやっている」と思えるらしいのだから面はゆい。しかし私のような人物は例外として、田舎に移住した人びとはじつによく働く。もともとフットワークが軽い人間が田舎に移り住んだのだからそれも当然だろうが、私はそれにプラスして、自然の中で暮らすことによる一種の義務感が働くためではないかと考えたりもする。どんなに怠け者であろうと、雑草だらけの自分の家の庭を眺めるのは嫌なものだ。ある夏、私は本職の仕事に追われ、庭を雑草だらけにしてしまった。その夏じゅう、チラと横目で庭を眺めるたびに私の心の中に小さな罪悪感が湧き起こった。庭を放ったらかしにしていること自体が自然の摂理に反するというか、神様に無言のうちに晩まれているというか、とにかく心が落ち着かない。そこで私は、やっと暇を見つけ、何とか庭の雑草を刈り取り、罪の意識を薄めたものだった。もちろん、雑草を伸ばしたからといって誰に文句を言われるわけでなく、損害をこうむるわけでもない。それでも雑草を刈りたくなるというのは、それが自然に囲まれて暮らすうえでの暗黙のルールであり、義務であるからとしか言いようがない。それでいて、こうした義務感には辛さが伴わない。だからこそ田舎暮らしを実践する人びとは、忙しい忙しいと口にしつつも、畑仕事や庭仕事を厭うこともないのだろう。